空飛ぶ車いす
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車いすの修理ボランティアをして思うこと
 
大阪府立堺工科高等学校  増沢 優矢

  3年生の課題研究授業が始まりました。課題研究は、テーマ毎に別れて1年間をかけ作品を製作したり、研究したりする教科です。最初の授業の説明で「車イス修理ボランティア」というテーマがあった。他に工作機械で加工するテーマもあったが、修理とボランティアという言葉が心に引っかかったので何とはなしにこのテーマ「車イスの修理ボランティア」を選んだ。他のメンバーも似たり寄ったりの感じで選んだみたいでした。
  最初の授業で、「車イスの修理ボランティア」の説明を聞きました。日本では、「車イス」が、老人ホーム等から年間3万台以上廃棄されています。一方、アジアでは原則「自費購入」のため「車イス」が高くて買えない子供達が大勢います。こんな子供たちに「車イス」をプレゼントしています。まだ使える「車イス」が捨てられるのは「もったいない」ので、この「車イス」を再生して、誰かに役立ててもらいことが、目的です。修理された車イスは、海外旅行者が輸送ボランティアとして運んでくれたり、コンテナ船で運んだりします。もともとは、飛行機による輸送ボランティアから始まったので、「空飛ぶ車イス」と名付けられています。
  僕たちの役割は、中古車イスを整備して気持ちよく使ってもらえるようにすることです。次の授業から少し汚れた車イスを分解する作業が始まりました。もっと難しいものと思っていましたが、構造も自転車に比べてもチェーンやスプロケットがないだけ簡単ですぐ分解できました。タイヤもチューブのないチューブレスタイヤに出来るだけ交換し、交換できない場合は、チューブと虫ゴムを交換します。機械部分に比べてシートや肘掛けの破損補修は、簡単にはいかず、まず、洗剤で洗濯し汚れを落とし、舗損のひどいものは、アイロン粘着テープで接着したり、デニムの布をミシンで縫ってカバーを作りました。専門教科でアイロンとかミシンを使うとは思わなかったです。
  部品一つ一つのさびを落とし、揮発油で拭いてから、組立作業に移りました。軸は、ベアリングを洗浄後、グリスアップし組立、チューブレスタイヤに交換できる車輪は、すべて交換し、最後にブレーキを調整してできあがりである。十年近く使われた車イスもあると聞いていましたが、機械的な部品は汚れていますが、洗浄し再組立するとちゃんと動作したので大事に使われていたことがよくわかりました。また、サイズの違う子ども用の車イス3台の修理をしているときに、この車イスを使っていた方が筋ジストロジーで自分達と同じ高校生の時に亡くなったので提供されたと話を聞き、悲しい気分になったこともありました。
  修理の終わった車イスは、試運転をし、異常がなければ、折りたたんで保管しておき、発送の時にエアーシートで梱包し、持ちやすいようにひもをかけて保管します。発送は、他の授業中になったので、先生にお願いして玄関まで運んでもいました。しかし、授業が終わったときにまだ引き取りに来ていなかったので、制服のまま課題研究のメンバーと記念撮影をしたりしました。
  私たちの修理した車イスは、コンテナに詰められ、タイに送られると聞きました。学校の玄関前に置かれている梱包された車イスを見ただけなので、自分達のした仕事が本当に役に立っているという実感はあまりませんでした。
  その後で、先輩の修理した車イスを使っているインドネシアの子供の写真を見せていただきました。明るい太陽の下で、うれしそうに微笑んでいる子供と、その両親の笑顔を見ると、僕たちの修理した車イスはタイに送るそうですが、無事にタイに到着し、いろいろな方々に使ってもらい、微笑んでくれることを願わずにはおられませんでした。
  僕たちのしていることは、些細なことですが、地球のあちらこちらで役に立っていることを考えると「車イスの修理ボランティア」をしてよかったと思いました。